緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

11

 お店がお休みの日、街で買い物を済ませた帰り道で、馬車に乗っていたジルさんに声を掛けられた。
 いつもと違う立派な馬車にはジルさんの友人のヘルムフリートさんも乗っていて、私の店に向かう途中だという。

 てっきり花束の注文なのかと思っていたら、別件で用事があるらしいので、詳しいお話を聞いてみることにする。

「あの、用事とは一体何でしょうか? 花束ではないんですよね?」

「すまない。ヘルムフリートが君にお礼を言いたいらしくてな」

「そうなんだ。いつも綺麗な花束を有り難う。フロレンティーナもアンさんにお礼を言いたがっていたよ」

「……え? フロレンティーナ……?」

 ヘルムフリートさんが言う「フロレンティーナ」という名前に、最近どこかで聞いた事があるな……と考えた私はまさか、と思う。

「あ、あの、その方はもしかして……人違いじゃなければ……」

「うん。王女殿下だね」

「……っ?!」

 私は衝撃の事実に絶句する。
 花束を受け取る相手はジルさんの恋人だと思っていたけれど、それが王女殿下なのだとしたら……。

「ジルさんは王女殿下と恋仲……?!」

「それは無い」

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