竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
あなたのそばに居たくない


 さらさらと、夜の風がエリナの前髪を撫ぜていく。
 少し肌寒い。そう思ってエリナの瞼がゆるゆると持ち上がった。
 目を開けた向こうには、揺れるカーテンと、ベッドのそばに座り、本を読んでいるクーの姿。

 ――やっぱり、綺麗な顔。

 はちみつ色の髪は、今は夜闇に少し煙って見える。
 小さなランプ一つで本を読むクーの目が、炎のオレンジで明るい緑に光っていて。
 白い肌、精巧に、人形職人の手で配置されたようなパーツは、そのどれもがうつくしい。

 ……引き換え、エリナの髪はニンジンのような赤毛で、顔にはそばかすだって散っている。目立って凡庸な青い目。エリスティナだったころはもう少し綺麗だった気がするけれど、今のエリナは少なくとも、美人だと胸を張って言える自信がなかった。

 ――きっと、番じゃなければ、相手にもされない。だって、クーは最強の竜種だもの。
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