竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~


 竜種の雛が何を食べるかといえば、人間の子供とそう変わらない。
 少し肉が多いほうがいいだとか、その程度の差でよかった。
 エリスティナは、畑に種を撒き、時には森の鳥たちから卵を拝借し、森の実りをいただきながら、クリスを大切に大切に育てた。

 クリスは母思いのよい子で、成長するにつれ――竜種の成長は非常に早く、代わりに老化は遅いのだ――エリスティナの手伝いをしてくれるようになった。
 劣等個体とはいえ、竜種だ。だからエリスティナは、竜種の本能のようなものでこの子に否定されたらどうしようかと思っていた。

 けれどそんな不安は杞憂にすぎず、クリスはエリスティナを「産みの母親ではない」と知ってなお、エリスティナを「エリー」と愛称で呼んで慕ってくれさえした。

 そんな子を愛さずにおれようか、いいや、愛さずにはおられまい。
 いつしか、エリスティナはクリスを本当の子供のように愛しく思うようになっていた。
< 52 / 315 >

この作品をシェア

pagetop