青空くんと赤星くん






「あった!!……名前も住所も生年月日も全部写ってる。こいつの自転車に……夏の血がついてりゃ証拠になんだろ!」
「落ち着いて。スマホがミシミシいってるよ」



スマホは赤星くんの手で握り潰されて弱ったように画面の光を落としていったが、その光を彼が吸収したのか瞳が輝いている。希望だ。



逆に私は、自分から『ナッツのひき逃げ犯、わかっちゃった』と言っておきながら、見当違いなんじゃないかと不安になっていた。



私の髪を触った不審者とあのサラリーマンが同一人物だったのか、私もナッツのように覚えていない。
それに、ナッツのひき逃げ犯と私が出くわしたサラリーマンまで同じ人なんて、そんな都合のいい偶然があるのかな?
リアリティがないというか、現実は甘くない、現実は厳しいって、大人はよくそう言うよね……。



赤星くんは右手をグっと握って、パーにした左手にパァン!と打ちつけた。
鼻血でも出しそうなほど興奮している。



……うん、そうだよね!
空振りでもいい。
一縷の望みがあるならば、即刻確かめてみるべきだよね。



「早退する」
「うん!気をつけていってらっしゃい!」
「おう。……くるみ、4月1日な」
「いっ、いま……。な、なんて?」
「ただのネタ切れだ」



牛尾田。
牛丼。
牛タン。
牛脂。
牛乳。
ビーフ。
牛スジ。
モウモウさん。
牛蛙。
牛若丸。
牛糞。
闘牛。
子牛。
牛鬼。
和牛。



…………くるみまで長かったな。



「あ」



思いついた、という表情をして、赤星くんが立ち上がった。



「再会の『さ』」



勝ち誇ったような顔をして教室を出ていった。



……もう大好きになっちゃうからね。



中野くんが手を伸ばしながら、「赤星くん席に戻って!」と叫んだ。
平山くんが、「用事終わらせに行ったんだろ?あいつ学校に来るのは一番遅いけど、出てくのは一番早いな。協調性なし」とつっこんだ。



結局、ディベート対決の決着は26人が手をあげた校庭に決定した。



窓の外を眺めると、校庭の桜並木のなかを赤星くんがひとり白昼夢から目覚めたように突っ走っていく姿が見えた。



私は手を合わせた。
こんにちは神様。
大吉の牛尾田くるみです。
どうか犯人が捕まりますように。
そして、赤星くんがクラス会に間に合いますように。
どうか……。



春の陽にあたためられた蕾がほころびはじめ、桜が微笑むまであと少し。
その奥に見える景色は夢のような、輝く未来でありますように。





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恋愛(学園)13ページ

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生きるって、いったい何がどう素晴らしいんだろうね? 16年も生きてるのに、さっぱりわからないよ。 僕の手が届く世界は、そのスバラシイ世界のおこぼれみたいなものしかないんだって気づいたとき、ここから飛び降りれば死ぬことができるってことにほっとして、涙がでたんだ。 屋上の隅に立っていると、突然、君が現れた……。 新調した眼鏡から覗く世界のように、君は僕の世界の見方を明らかに変えた─────

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