まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー

お前は俺が護ってやる



「いらっしゃいませー」


「美味しいよー!」


「よってってー」



生徒達による軽快な呼び込み。

定番の焼きそば、たこ焼き、クレープなど飲食物が並ぶ。



「お兄さんたち、疲れてない?」



「休憩していきなよ」



私達の進路を塞ぐように営業をかけてきた生徒は、着物にエプロンといった衣装を纏っている。

手持ちの看板には、甘味処と書かれていた。



「先輩、入りましょうか」



「ああ」



「二名様ご案内ー」



「こちらへどうぞ」



看板持ちに促されるまま、私達は教室へ入る。

大きな傘の下に赤い敷物の長椅子という、和風甘味処のイメージそのものだった。



「お決まりになりましたら、お声かけください」



メニューを置いてまた客引きに戻る生徒。

メニューは、あんみつやおしるこなど、イメージ通りの和風なものばかりだった。



「先輩、何にしますか?」



「お前と同じ物で」



「考えるのめんどくさがりましたね。では、勝手に。………すみません」



挙手して店員を呼ぶ。



「お待たせしました」



「みたらし団子とほうじ茶を二つずつ、お願いします」



「かしこまりました」



店員が去って、改めて視線を巡らせる。

私達以外には、客が五組、どれも学生だ。



「この後どうする?」



どうすると聞かれましても、何があるかもわからないのに。



「先輩、パンフレットを手に入れたんですよね。いいものありましたか?」



「んー………。特にはないな」



「ないんですね……」



まあ、学生の文化祭である。

何がいいとか事前にわかるまい。



「気になったものがあれば、入ればいい。ああでも、陽橘のクラスには行っておかないと」



「そうですねぇ……」



私たちを招待した弟君に、挨拶は必要でしょう。

親族として。

たとえこんな、仮面をもらう事になったのだとしても。

何をされるかわからない、下手したら、クラス中から袋叩きにされるのだとしても。



「心配すんな。お前は俺が護ってやる」



「先輩…………」



素直に喜べないのはなぜだろう。



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