まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー

子どもの喧嘩に親が出てくるんスね




まだまだ盛り上がる体育館を出て、時折現れる襲撃者を撃退しながら歩く廊下はスリリング。

先輩は楽しんでいる風ではあったが、それはそれ。

私の中の人たちも嬉々として暴れていた気がしなくもないが、それもそれ。

天原月海としては、黒仮面のお陰で散々な目に遭った。


そして我々はついに、目的地に到着する。

そう、私たちに黒仮面を用意した、火宮陽橘の所属するクラスだ。



「君が陽橘の彼女かぁ。……こんな奴と付き合うのは辞めて、俺にしなよ」



「僕のものに近寄らないでくれる?」



弟君の声が聞こえたので、覗き込むと、プリン頭のイケメンから咲耶を庇うように弟君が間に立っていた。

なんだか、とてもめんどくさい時に来てしまった気がする。

火宮の両親は、彼らと少し離れた席でコーヒーとチーズケーキのセットを前にしていた。



「いらっしゃいませ。二名様でしょうか」



燕尾服を着た女生徒に声をかけられた。

執事喫茶のようだ。



「二人です」



「こちらのお席にどうぞ」



案内されたのは、火宮夫妻の隣の席だった。

我々の仮面の下は、嫌いな食べ物を前にしたときのような苦い顔をしていただろう。

それでも、帰りますとは言えないので、嫌々ながら席につく。


よりにもよって飲食店かぁ……。

団子の件もある。

安心して食べられないよ……。

いや、それは火宮家でも同じか?



「おい、ツクヨミノミコト」



先輩に小声で呼ばれた。



「お前の力でなんとかしてくれ」



「おや? 家で鍛えられているから多少は平気なのではなくて?」



「鍛えてるからといって、完全じゃねえ。ヨモギがいないから無理もできない。特に、ここは陽橘のクラスだ。どんだけぶっ込んでくるかわからない以上、避けれるものなら避けたいんだよ」



「そういうことならお任せあれ。もとよりこの身体は毒に耐性ができていないからねぇ。いい感じに避けるつもりだったさ」



私は指先をテーブルの上に滑らせる。

すると、私たちに狙いを定めていた生徒が、興味を失ったように仕事に戻った。



「簡易的な結界を張った。学生程度にはこれで十分よ」



「認識されないようになる術か。流石だな」



「昼間の月のように、目立たないがそこにあるということさ」



これで、注文をとりにくる生徒はいなくなり、それ即ち食す必要もない。

席だけ埋めて、金を落とさない迷惑な客だ。

今回はありがたいので文句は言うまい。



「あくまで認識されづらくなるだけだ。目立つ行動をとれば目立つからね?」



「今はもっと目立つ奴らが他にいるから平気だろ」



この教室で今、最も目立つ人達。

弟君とプリン頭君の喧嘩が激しくなる。

< 22 / 90 >

この作品をシェア

pagetop