まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー

風呂で溺れればいいのに……



先輩やイカネさん達が足止めしてくれているお陰で、邪魔されることなく中庭に降り立つ。

やけに広い池が水の家であることを象徴しているようだ。

ところどころ突き出る岩と、島を複数の橋が繋ぐ。

中央の東屋に小さな人影があった。

迂回するのも面倒だ。



「おまえ、なにすんだ!」



「………黙れ」



スサノオノミコトに変わり、ヨモギ君を抱えて水の上を走った。

波紋は生まれない。

海の神は水に沈まない。

池に映る月の上に立ち、彼を見下ろす。



「神水流の者とお見受けする」



ヘッドホンを首にかけた小柄な少年が、ボサボサ髪に隠れた目でこちらを見上げた。



「………僕を知ってるの?」



消去法だ。

悟らせぬよう、私は微笑んだ。



「文化祭のお化け屋敷の幻術」



言うと、少年はぴくりと肩をふるわせた。



「白銀の妖狐。あれは君だね」



当たりだったらしい。

少年は小さく頷いた。



「僕は、彼女をこの家から逃してあげたいんだ……」



それから、私が抱えているヨモギ君の狐耳に目を止める。



「………君はもしかして、彼女の子………?」



「……オレ?」



「私たちも、それを疑っていてね。会わせてはもらえないだろうか?」



「なにいってんだよ! いまはマシロだ!」



ヨモギ君の抗議に、少年は首を傾げる。



「マシロ?」



「君たちが攫った鬼の子だよ」



「鬼の子………白髪の………だから、マシロ……」



モゴモゴと喋る少年に、マシュマロから取りましたなんて言わないでおく。



「マシロはどこだ! おまえしってるのか!」



ヨモギ君は私の手をすり抜け、少年の肩を揺さぶる。

私も東屋に入った。



「まっ、まって……っ。僕知らない」



「しらないってことないだろ! かくしてたら、このげぼくがおまえなんてやっつけてやる!」



私、ヨモギ君の下僕なの………?



「ほんとに知らないんだっ。この辺りに牢屋への入り口があるのは分かってる。けど、そこにいるのかも分からないし、それにっ、開け方がわからない……っ」



「そんな……」



ヨモギ君が顔色を悪くし、ガックリと膝をつく。


くそ。



「ここまで来て……」



こうなったら神水流当主を連れてきて開けさせるか。

いや、大人しくこちらの言うことに従うとは思えない。

下手したら戦闘だ。



『私たちの実力を疑ってる?』



『………制圧する』



穏便にすませたいんです。


適当にこの辺潰して、入り口を探すか。

でも逆に埋もれる危険もある。

いやそこはツクヨミさんの強運で……。



『やる? やっちゃう?』



ちょっと黙って。



悩んでいると、隣に金髪美女が降り立った。


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