まじないの召喚師2 ー鬼の子と五大名家ー
「さて、問題は、あれはどんな鬼かって事だが」
「そんなに問題が?」
鬼ってどれも一緒じゃないのか。
「相手によってはお礼参りされるぞ」
「わお」
火宮家に討ち入りに来る鬼たち。
火炎の術師の集まり。
大火事不可避。
「それはとても困ります」
「だろ?」
「イカネさん、あの子はどんな鬼かわかりますか?」
「わたくしの見立てですと、酒呑童子かと」
「酒呑童子って………」
天を仰ぎ、乾いた笑いをこぼす先輩。
「なに、そんなにすごいの?」
私の疑問に、イカネさんは、美少年ふたりから視線を外さずに答える。
「酒呑童子といえば、最強と言われている鬼です」
「でもまだ子どもに見えるのに」
「ええ。妖気からするに、まだ子どもでしょうね。おそらく、大昔に封印された酒呑童子の頭の息子でしょう」
てことは、若様だ。
先輩はふらりと立ち上がる。
「…………ヨモギ、そいつ、元いた場所に返しに行くぞ」
「鬼か!」
いきなりなんてこと言い出すんだこの男は。
「鬼はあいつだ」
「せっかく仲良くなったふたりを引き離すなんて、先輩の方がよっぽど鬼です!」
「ほぅ? 俺に口答えすんのか」
「くぅっ………、でもここは、ひきませんよ」
腰が引けながらも拳を構える私の後ろから、ヨモギ君と鬼の子の捨て犬の眼差しが援護する。
「………しゃーね。討ち入りが来たら止めろよ」
先輩は折れた。
両手を繋いで飛び回る美少年ふたりを見ていると、子どもは仲良くなるの早いなぁと思う。
その一端を担った焼きマシュマロ最強。
「もしもの時は、お前には人一倍働いてもらうからな」
「………お手柔らかに」
今日、自身の無力さを知ったばかり。
全てを救えるとは思えないが、夢や希望も捨てたくない。
私の手の届く範囲で頑張りますよ。
「オレ、ヨモギ。おまえはなんてなまえだ?」
自己紹介なんて始めちゃってまぁ、微笑ましい。
「ボク………」
「なんだ、おまえもなまえないのか?」
「うん………」
「じゃあ、オレがなまえかんがえてやるよ」
「え?」
「オレのなまえ、ご主人様がつけてくれたんだ。だから、こんどはオレがかんがえる」
「うんっ!」
「そうだな………。マシュマロがすきだから………マシロ。マシロはどうだ?」
「マシロ、いいよ!」
「マシロ、マシロ!」
「ヨモギ、よろしく!」
「よろしくマシロ!」
マシュマロが理由でいいのか。
いや、可愛いよ、マシロ君。