転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「……なるほどね。ドニ殿下は、あなたの手袋やショール、短剣を手に入れるために、アンバーを口説いたのでしょう。仕込みも、彼女にやらせた。そして用済みになって、殺害、と……」



 アルベール様は、深いため息をついた。



「ブローチの件も、これで合点がいきました。恐らくは、モンタギュー侯爵と共に現場の調査にいらした時、彼がこっそり忍ばせたのでしょう。アンバーが、辞めるその日に仕込んだのでは、ずいぶん慌ただしいなと思っていたのです」



 アルベール様は、最初からそのことを気にしておられたな、と私は思い出した。



「全て、アルベール様の仰る通りでしたわね。ドニ殿下は、私のことなど何とも想っておられなかった。私を心配なさるふりをして、私に罪を着せようとしていたのですわ……」



 ――モニク嬢が犯人であるかのような仰り様は、止めていただきたい……。

 ――モニク嬢がそんな人間だとお思いですか……?



 殿下のお言葉が、蘇る。白々しい、と私は怒りが湧き起こるのを感じた。



(私を庇うふりをして、陰では着々と、私を犯人に仕立て上げていたなんて……)



「大丈夫ですか」



 アルベール様は、私の隣に腰かけられると、優しく肩を抱いてくださった。



「あなたの女性としてのプライドを傷つけることになるので、あまり言えなかったのですが。事件の後、殿下があなたに言い寄り始めたことについては、唐突だなと思っていました。きっと、思いがけずアンバーがサリアン家を解雇されたからだと思います。家の中に詳しい協力者がいなくなったので、自らあなたに近付こうと決めたのでしょう。サリアン邸に出入りして、事件の捜査状況を探ると同時に、隙あらばあなたを犯人に仕立て上げようという魂胆ではないでしょうか……」



 そうですわね、と私は力無く頷いた。



「そしてきっと、私とアルベール様を仲違いさせようという魂胆でもいらっしゃいますわ。上手くいけば、パーティーの夜の私のアリバイは崩れますもの。ドニ殿下は何かに付け、アルベール様のことを悪く仰いました。ニコル嬢との噂を私に吹き込んだのも、彼です」

「……そうですか」



 アルベール様が、低く呟く。怒ってらっしゃるのかしら、と私は彼の顔を見上げた。
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