転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 部屋へ入って来たエミールは、私を見ておやという顔をした。



「……もしかして僕、お邪魔をしましたか?」

「まったくだ」



 仏頂面で、アルベール様が仰る。



「お前のプディング増量キャンペーンは、始まる前に終わりを告げたぞ」

「ええええ!? 何ですか、それ!」



 エミールが、頬を膨らませる。アルベール様は、そんな彼の頭を、くしゃくしゃと撫でた。



「冗談だ。ティリナ行き、ご苦労だったな。早速、記録とやらを見せてくれるか?」

「はい!」



 エミールは、キリッと表情を引き締めると、うやうやしくアルベール様に封筒を差し出した。私たち三人は、アルベール様を真ん中にして、並んでソファに腰かけた。



「僕、あらかじめ仕分けておきました。まずこれが、バール男爵の商売の記録です」



 エミールが、ある書類を指さす。アルベール様は、手に取って読み始めたが、そのとたん顔色は変わった。



「……何だと?」

「一体、何ですの?」



 アルベール様は、信じられないといった様子で首を振った。



「いかがわしい商売だろうとは踏んでいたが、まさか、ここまでやっていたとはな……。男爵は、違法な薬物を貴族らに闇で売りつけていた、とある。媚薬に、麻薬……」

「麻薬!?」

 

 私は、思わず大声を上げていた。このモルフォア王国では、麻薬の使用は、場合によっては死罪に該当する重罪である。



「道理で、財を成したはずだな……。ああ、これは顧客リストか。ずいぶん、大勢……」



 アルベール様は、呆れた表情で書類をパラパラめくっていたが、ふとその一枚に目を留めた。私は、不審に思った。



「どうされました?」
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