転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

11

 食事の場に戻ると、マルク殿下が私をお呼びになった。



「モニク嬢、お待ちしておりましたぞ。あなたも、是非どうぞ」



 殿下は、シート上に並べられた料理を指された。



「新入りの料理人が、考案したメニューだそうです。せっかく自然の中で食事をするのだから、植物を活かした料理はどうかと思ったそうで。あなたやドニは植物にご興味があるようだから、召し上がっていただきたくてね」



 それでドニ殿下を呼んでおられたのか、と私は合点した。



「わざわざ、お待ちくださっていたのですか? 恐縮です」



 私は、元通りドニ殿下のお隣に腰を下ろした。ローズや他の参加者らは、すでにスタンバイされている。国王陛下とエミールは、どこかへ行かれたのか、姿は見えなかった。時間を置いて戻られたアルベール様も、その場にさりげなく加わられた。



「さあ、温かいうちにどうぞ」



 ドニ殿下が、私に皿を勧められる。フキノトウのリゾットだった。緑が美しい。



(確かに、春らしくていいわね……)



 だがローズは、不満そうな顔をした。



「美味しいのかしら? 何だか、苦そうだわ」

「確かに苦味はありますが、そこがいいんですよ」



 苦笑されながら、マルク殿下がスプーンを手にされる。その時、私はドキリとした。殿下がすくい上げたフキノトウに、違和感を覚えたのだ。



(葉の形が違う? あれは……、フキノトウじゃない!)



「マルク殿下!」



 私は、殿下の手から、スプーンを叩き落としていた。皆が、あっけにとられた顔をする。



「モニク嬢!? 何を……?」

「皆様も、召し上がらないで! これは、フキノトウではありません。よく似た、毒草ですわ!」



 タバインについて調べるうち、私は植物にずいぶん詳しくなったのだ。殿下が召し上がろうとしていたのは、ハシリドコロという毒草だった。誤飲すれば、嘔吐などの中毒症状を引き起こす。量によっては、命を落とす可能性もあるくらい、恐ろしいものだ。



「毒草だと!?」



 その場にいた全員が、騒然となる。私は、彼らの皿を見回した。



「すでに、お召し上がりになった方は?」

「一口、食べてしまったぞ!」

「私もですわ!」



 数人が、悲壮な声を上げる。私は、彼らの皿を手に取って、観察した。



(これは、本物のフキノトウだわ。だとすれば……)



 私は、皆に向かって告げた。



「見させていただいたところ、皆様が召し上がったのは、確かにフキノトウです。でも念のため、これ以上召し上がらない方がよろしいと思います」

「一体、何事だ!?」



 そこへ、騒ぎに気付いたのか、国王陛下が戻って来られた。マルク殿下の皿にだけ毒草が入っていたと聞くと、陛下は血相を変えられた。



「これを作った料理人は誰だ!」
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