転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「では、そのように陛下に申し伝えよう……。ところで」



 ミレー公爵は、少し言いよどまれた。



「アルベール。そんな状態の時に、言いにくいのだが。近いうちに、一緒に王宮を訪問しないか。お前を、国王陛下にお目通りさせたいのだ。モニク嬢にも、同行していただきたい」

「ああ、もちろんですよ」



 アルベール様は、気軽に同意された。



「元々、結婚をお許しいただいたこと、お礼を申し上げねばと思っていたのです。モニクが襲われて、私も負傷したせいで、つい延び延びになってしまったのですが」

「では、行けそうか?」



 公爵が、念を押される。



「はい。足なら問題ありませんし。モニクも、大丈夫ですよね?」

「ええ、お供しますわ」



 そろってお答えすると、なぜかミレー公爵は、ふっとお顔を曇らせた。だがそれは一瞬で、彼は私に微笑みかけた。



「襲撃事件といえば、もうご安心いただきたい。義理のお母上とその愛人は、身柄を確保しましたから。あとは、判決を待つだけです」



 すると、アルベール様が口を挟まれた。



「父上、その件なのですが。少々ご報告があります。バール男爵の麻薬取引について、調香師ピエールが所持していた顧客リストを、お見せしたいのです」



 ミレー公爵は、怪訝そうになさった。

 

「それなら、ドニ殿下の自白を受けて捜査する過程で、すでに見せてくれただろう?」



 しまい込まれていたあのリストか、と私は思った。殺人事件が一段落するまでは、とエミールを制止しておられたが、ついに公爵に提出されたのか。だがアルベール様は、気まずそうなお顔をされた。



「実は、まだお見せできていない分がございまして……。モニク、すまないけれど、取って来てくれますか? 私の部屋の、薔薇の装飾があるチェストの、下から二番目の引き出しです」



 アルベール様は、懐から鍵を取り出すと、私に手渡された。それを見たエミールは、パッと顔を輝かせた。



「僕が行って、取って来ますよ。義姉様、鍵をお貸しください。僕の手柄ですからね!」

「……じゃあ、お願いしようかしら?」



 私がエミールに鍵を手渡すと、アルベール様のお顔には、一瞬狼狽が走ったように見えた。



「エミール。下から二番目の引き出しだからな? 他は、絶対に開けるなよ?」

「一度聞いたら、わかりますって!」



 エミールは、鍵を手に駆け出して行ったのだった。
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