転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

13

「着きましたね。確か、この辺りでしょう?」



 アルベール様が、立ち止まる。今私たちが来ているのは、サリアン伯爵領の森だ。私たちは、アンバーの献花に訪れたのである。



「そうですわね」



 私はしゃがみ込むと、遺体が発見された場所に、花束を供えた。しばし瞳を閉じ、アンバーに思いを馳せる。アルベール様は、静かに寄り添ってくださった。



(アンバー。あなたを殺した男性は、報いを受けたわ……)



 侍女仲間から聞いたところによると、アンバーはドニ殿下のことを、本当に愛していたらしかった。その彼の手にかかって殺された彼女の思いを考えると、私は胸が痛んだ。



(そりゃあなたは、私を陰で馬鹿にして、あげく殺人犯に仕立てる手伝いをしたわ。でもだからといって、殺される理由は無いわ……)



 安らかに眠ってちょうだい、と最後に声をかけると、私は立ち上がった。



「もういいのですか?」

「ええ。もう少しゆっくりしたい気もするけれど、この後もありますし」



 献花の後、私とアルベール様は、モンタギュー侯爵邸を訪問する予定である。コレットの懐妊が発覚したため、お祝いを持参するのだ。



「挙式は私たちが先でしたけれど、赤ちゃんは先を越されてしまいましたわね」

「早く欲しいですか? 俺はもう少し、二人だけの生活を楽しみたい気もするけれど」



 軽く抱き寄せてくるアルベール様を、私は軽くにらんだ。



「でしたら、頻度を減らしていただけませんこと? いつ身ごもっても、おかしくありませんわよ」



 挙式からこっち、アルベール様の求めはほぼ毎夜……といったところで。昼間は植物研究のお手伝いもあるし、体力的にも相当きついのだけれど。



「それは無理ですね」



 アルベール様は、きっぱりとかぶりを振られた。



「一ヶ月、無駄に焦らされましたから。その分を、取り返さないと」

「私のせいじゃ、ありませんわよ……」

 

 いやでも、怪我をなさったのは私を庇われたせいか。となると、やっぱり私のせいなのか。



(いえいえ、悪いのはバルバラ様……)



 その時、アルベール様が不意に立ち止まられた。



「どうされましたの?」

「静かに。そこに誰か潜んでいます」



 アルベール様が、じっと草むらを見つめる。おかしいな、と私は思った。アルベール様が派遣してくださった森番が、このサリアン伯爵領の森も、ちゃんと管理しているはずなのだけれど。不審者が入り込めるはずは無いが……。



 アルベール様は、私を庇うようにしながら、腰に構えた剣に手をかけた。そして、そっと草むらをのぞき込む。



「――え?」



 ややあって彼は、何だか間抜けな声を上げた。気になった私も、のぞき込む。そこには、浮浪者風の男が寝転んでいた。その顔を、よくよく見ると……。



「お父様!?」
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