転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 私は、困惑した。



(どういう意味かしら……!?)



 アルベール様のお父様、ミレー公爵は、国王陛下の従弟であらせられる。(偽装なのだからそんなことになるわけは無いが)、もしアルベール様と私が結婚したら、ドニ殿下と私も親戚になってしまう。こんなしがない伯爵家の娘と縁続きになるのを防げなかった、ということだろうか。



「モニク嬢のことは、ずっと気にかけていたんですよ」



 ドニ殿下が、静かに語られる。



「血の繋がらないお母上とご一緒では、心安まらないのではないかと……。義理の妹君は、空気の読めない方のようですし。服装のTPOが、わきまえられないほどの」



 マルク殿下にまとわりついているローズを見やって、殿下は顔をしかめた。喪に服すべき時に、濃い化粧を施している彼女を、どうやら不快に思われているようだ。同時に、私を不満に思われているわけでは無いらしいとわかり、少し安堵する。



(むしろ、逆のような……?)



 確かにドニ殿下は、以前から私をよく気遣ってくださった。ローズは、殿下らを含む青年貴族たちを、屋敷のサロンに頻繁に招いては、お喋りに花を咲かせる。だが社交が苦手な私は、たまに加わってもロクに話せなかった。いつも隅で小さくなっている私を、殿下は話の輪に、上手に引き入れてくださったものだ。



(だとしたら、何を考えてらっしゃるのかしら……?)



「ああ、こちらですか」



 ドニ殿下の明るいお声に、私はハッと我に返った。考え込んでいるうちに、いつの間にか中庭へ到着していたのだ。



「これは、素敵だ。想像以上ですね」



 殿下は、感心したように庭内を見渡しておられる。そこには、様々なデザインのトピアリーが立ち並んでいるのだ。マルク殿下はローズと共に、すでに鑑賞しておられた。



「ほう、これは面白いデザインだ」



 マルク殿下が、その中の一つに目を留められた。チェスの駒の形に刈り込んだものである。そういえば、殿下はチェスがご趣味だったか、と私は思い出した。



「殿下は、チェスがお得意でいらっしゃるとか。是非今度、教えていただきたいですわ」



 すかさず、ローズが華やかな声を上げる。だがマルク殿下は、彼女の言葉に反応しなかった。殿下はなぜか、そのトピアリーの下の地面を、じっとご覧になっていた。ややあって、質問なさる。



「こちらは、新しく造られたものですか」
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