転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
第四章 深まる嫌疑と求愛者

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 その翌日、お父様とバルバラ様、ローズ、私は、陰鬱なムードで朝食を取っていた。



 結局あの後、手袋とショールは、証拠品として押収された。あの短剣は、お父様がご自分のお部屋に隠しておられる。私を庇うおつもりなのだろう。ちなみに発見者アンバーは、短剣をお父様にお渡しした後、いつの間にか姿をくらませたとのことである。



 そしてマルク殿下は、本格的に事件を調べるおつもりのようだ。私はまだ嫌疑が不十分ということで、身柄を拘束されるまでには至っていないが、噂はひたひたと広まりつつある。現に今日は、バール男爵とシモーヌ夫人の葬儀の日なのだが、我々サリアン家は参列を拒否された。『婚姻に至っていなかったから』という名目だが、私を疑っているからに違いなかった。



「はーっ。もう、やってられないわ」



 沈黙を破るようにため息をついたのは、バルバラ様だった。彼女は、キッとローズをにらみつけた。



「あなたが軽率に、モニクの物だ、なんて口走るからじゃない。あそこで黙っていれば、我が家は疑いをかけられずに済んだわ」



 ローズは口を尖らせると、だって、とぶつぶつ呟いた。



「止めないか。元凶は、ローズじゃないだろう」



 たしなめるようにそう仰ると、お父様は私をじろりとご覧になった。私は、愕然とした。



「お父様、私を疑ってらっしゃるんですの?」

「門番はあのパーティーの夜、中庭で女の影を見たと言っておる。第一、あの短剣は何だ。言い訳できんだろうが」

「ちょっ……。私がお二人を殺して、証拠品を埋めたと仰りたいんですの!? あんまりです……」



 私は気色ばんだが、お父様は苛立たしげにさえぎった。



「お前が殺していようがいまいが、どうでもいいんだ! 問題は、そんな噂が立ったことだ。ローズはこれから結婚を控えているというのに、どうしてくれる!」



 私は、言葉を失った。信じてもらえるどころか、お父様はローズのことしか考えていなかった。庇ってくれたのも、彼女のためだったなんて。

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