転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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「ご家族に、ですって?」



 私は、再び大声を上げていた。殺人の嫌疑の晴れないような私を、本気で紹介しようというのか……。



「俺の家族は、皆あなたのことを信じていますから、心配しないでください」



 アルベール様が、柔らかく微笑まれる。



「特に母は、あなたを好ましく思っているようで。モニク嬢が人殺しなどに手を染めるはずが無いのに、とマルク殿下に怒っていましたよ」

「お母様が?」



 アルベール様のお母様とは、二、三度しかお会いしたことが無いのだが。その程度の面識で、どうしてそこまで断言してくださるのだろう。よくわからないが、信じていただけたことには、ほっとした。



「ええ。そして弟も、あなたに会うのを楽しみにしています。うちは男二人の兄弟だから、姉ができた気分のようですよ」



 アルベール様には、エミール様という十二歳の弟君がいらっしゃるのである。



「ありがとうございます。では、伺いますわ」

「よかった」



 アルベール様は、ほっとされたようだった。



「日時は、コレットを通じて知らせます……。では、そろそろ失礼しますよ。これ以上長居したら、怪しまれそうだ」



 時計を見ながら、アルベール様が仰る。彼は、入って来た窓の方へさっさと向かわれたが、ふと思い出したようにこちらを振り向いた。



「そうだ。肝心な物をお渡しするのを、忘れていました。こちら、どうぞ使ってください」



 彼は、懐から小瓶を取り出すと、私に差し出した。



「何ですの?」

「香水です。就寝前に使用すると、安眠効果があるのだとか。ご不安だらけのこの状況で、あなたがちゃんと眠れているか、気になりましてね」

「あ……、ありがとうございます!」



 私は、思わず顔をほころばせていた。確かにパーティー以降、ショッキングなことの連続で、ロクに眠れていなかったのだ。それに気付いてくださったとは。



「気になさらないでください。昼間のお詫びも兼ねていますから。……本当は、もう少し居て差し上げたかったんです。でも、二人の葬儀には是非参列したかったのでね。事件について、情報が得られるかもしれませんし」



 それで参列にこだわっていたのか、と私は納得した。その上、律儀に詫びの品まで持って来てくださるなんて。蓋を開けると、上品な良い香りがした。確かに、リラックスできそうである。



(前世でいえば、アロマテラピーってところね……)



「入手元は、バール男爵じゃないですよ? 母が贔屓にしている香水商の所で買い求めました。だから、安心してお使いください」



 冗談めかして仰ると、アルベール様は「ではまた、我が家にて」と言い残し、ひらりと窓から出て行かれたのだった。
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