転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!

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 馬車に乗り込んでから、アルベール様はしばらくの間、黙り込んでおられた。いつも雄弁な彼が、こんな無口なのは珍しい。私も会話の糸口が見つけられず、うつむいていた。



「……ずいぶん、雰囲気が変わられましたね」



 ややあって、彼はようやくそう仰った。



「バルバラ様の仰る通りですわ。コレットが、頑張ってくれたおかげです」

「それだけじゃないでしょ。……いえね、俺は今、猛烈に腹が立っているんです」

「……ええ!? 何にです?」



 私は怯えたが、アルベール様は意外な台詞を続けられた。



「サリアン伯爵と、その夫人にですよ。いかにこれまで、あなたに無関心だったかが、わかった気がしました。あなたも、もっと主張すべきだ。ちゃんとした侍女を付け、年頃の娘らしく装わせてくれと……」

「ご、ごめんなさい……」

「俺に謝ることじゃないでしょ」



 アルベール様は、ふいと横を向かれた。どうしよう、と私は焦った。



(そんなに、怒ってらっしゃるの? どうにか、ご機嫌を直していただけないかしら……)



 おろおろしていた私だったが、ふと気付いた。アルベール様の横顔は、ほんのり赤くなっていたのだ。私は、ドキリとした。



(嘘、ひょっとして照れてらっしゃる……?)



 もしかして、意識していたのはアルベール様も同じだったのだろうか。彼は、しばらく窓の外を眺めていたが、やがてぽつりと呟いた。



「……まあ、そのおかげでライバルは減らせたけれど」

「……はい?」

「いいえ、何でも」



 かぶりを振ると、アルベール様はようやくこちらを向かれた。打って変わって、深刻な表情だ。



「ところで、話は変わりますが。屋敷へ着く前に、あなたにお伝えしておかないといけないことがあります。弟の、エミールについてです」



 何を仰ろうとしているのか見当もつかず、私はきょとんとした。
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