転生したら伯爵令嬢でした(ただし婚約者殺しの嫌疑付き)。容疑を晴らすため、イケメン年下騎士と偽装恋愛を始めます!
6
馬車に乗り込んでから、アルベール様はしばらくの間、黙り込んでおられた。いつも雄弁な彼が、こんな無口なのは珍しい。私も会話の糸口が見つけられず、うつむいていた。
「……ずいぶん、雰囲気が変わられましたね」
ややあって、彼はようやくそう仰った。
「バルバラ様の仰る通りですわ。コレットが、頑張ってくれたおかげです」
「それだけじゃないでしょ。……いえね、俺は今、猛烈に腹が立っているんです」
「……ええ!? 何にです?」
私は怯えたが、アルベール様は意外な台詞を続けられた。
「サリアン伯爵と、その夫人にですよ。いかにこれまで、あなたに無関心だったかが、わかった気がしました。あなたも、もっと主張すべきだ。ちゃんとした侍女を付け、年頃の娘らしく装わせてくれと……」
「ご、ごめんなさい……」
「俺に謝ることじゃないでしょ」
アルベール様は、ふいと横を向かれた。どうしよう、と私は焦った。
(そんなに、怒ってらっしゃるの? どうにか、ご機嫌を直していただけないかしら……)
おろおろしていた私だったが、ふと気付いた。アルベール様の横顔は、ほんのり赤くなっていたのだ。私は、ドキリとした。
(嘘、ひょっとして照れてらっしゃる……?)
もしかして、意識していたのはアルベール様も同じだったのだろうか。彼は、しばらく窓の外を眺めていたが、やがてぽつりと呟いた。
「……まあ、そのおかげでライバルは減らせたけれど」
「……はい?」
「いいえ、何でも」
かぶりを振ると、アルベール様はようやくこちらを向かれた。打って変わって、深刻な表情だ。
「ところで、話は変わりますが。屋敷へ着く前に、あなたにお伝えしておかないといけないことがあります。弟の、エミールについてです」
何を仰ろうとしているのか見当もつかず、私はきょとんとした。
「……ずいぶん、雰囲気が変わられましたね」
ややあって、彼はようやくそう仰った。
「バルバラ様の仰る通りですわ。コレットが、頑張ってくれたおかげです」
「それだけじゃないでしょ。……いえね、俺は今、猛烈に腹が立っているんです」
「……ええ!? 何にです?」
私は怯えたが、アルベール様は意外な台詞を続けられた。
「サリアン伯爵と、その夫人にですよ。いかにこれまで、あなたに無関心だったかが、わかった気がしました。あなたも、もっと主張すべきだ。ちゃんとした侍女を付け、年頃の娘らしく装わせてくれと……」
「ご、ごめんなさい……」
「俺に謝ることじゃないでしょ」
アルベール様は、ふいと横を向かれた。どうしよう、と私は焦った。
(そんなに、怒ってらっしゃるの? どうにか、ご機嫌を直していただけないかしら……)
おろおろしていた私だったが、ふと気付いた。アルベール様の横顔は、ほんのり赤くなっていたのだ。私は、ドキリとした。
(嘘、ひょっとして照れてらっしゃる……?)
もしかして、意識していたのはアルベール様も同じだったのだろうか。彼は、しばらく窓の外を眺めていたが、やがてぽつりと呟いた。
「……まあ、そのおかげでライバルは減らせたけれど」
「……はい?」
「いいえ、何でも」
かぶりを振ると、アルベール様はようやくこちらを向かれた。打って変わって、深刻な表情だ。
「ところで、話は変わりますが。屋敷へ着く前に、あなたにお伝えしておかないといけないことがあります。弟の、エミールについてです」
何を仰ろうとしているのか見当もつかず、私はきょとんとした。