その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】
第4話 溢れ出るペット感……って、それ本当ですか?

〇教室 ある日の昼休み。

 机に肘をつき顎を乗せて、翼をじーっと見つめる詩音。
 翼はチューッと、紙パックのジュースを飲んでいる。

詩音「翼って、ペットみたいだよね」
翼「ゴフッ」

 吹き出した翼は、口元をぬぐいながら詩音を見た。

翼「し、詩音ちゃん今なんて……?」
詩音「ペットっていうか、可愛い犬?」

 あいた口が塞がらない翼に、詩音は「いや、なんかさ」と言いながら足を組んだ。

詩音「夏目といる時、まだご主人様に懐いてない犬感がすごいんだよね」
翼「そんなッ……!!」
詩音「昨日のあれとか──」

〇回想〇
  
「綾人君、今日の晩ごはんは何かな? ハンバーグだと嬉しい」
「この間ハンバーグだったでしょ。翼ちゃん、本当にハンバーグ好きだよね」
「もちろん! お母さんのハンバーグ美味しいから!」
「まぁそうだけども」

 じゅるり、とよだれが垂れる翼。

綾人「……」

 綾人は「よしよし。飴ちゃんをあげよう」と翼の頭撫でる。結構強めに。

翼「ちょ、やめてよっ! 飴は欲しいけどっ……、髪がボサボサになるでしょー!」

 イメージ的には、ガルルッと吠える犬のように、綾人を睨む翼。

〇回想終了〇

翼(私って、そんなに犬っぽいの……?)
詩音「私も翼みたいな犬を飼いたい」
翼「詩音ちゃ〜ん」

 ショックからうなだれる翼。
 見かねた詩音がポケットから、棒付きキャンディーを取り出した。

詩音「これをあげるわ翼」

 うわーんと泣きながらも詩音から、棒付きキャンディーを受けとる。
 そして今は食べずに、大事にポケットにしまう翼。それを見て、犬が大事なものを穴を掘って隠す様が浮かび、詩音はクスッと笑った。

詩音「やっぱり可愛いペットね」
翼「詩音ちゃんってば、そればっかり〜!」

 後ろの席で、腕を枕に寝ていた瑠叶がむくりと起きた。
 翼と詩音は、瑠叶に視線を向ける。
 とろんとした眠たそうな瞳で、二人を見た瑠叶。

瑠叶「んぁ……もう授業おわった?」
詩音「昼休みがもうすぐ終わるわよ」
瑠叶「そんな」

 えぇぇ、とショックをうけた瑠叶。

翼「瑠叶君、お昼ご飯食べてないの?」
瑠叶「ううん。三時間目に早弁した」

 イェーイとピースをする瑠叶に、「早弁……」と翼は呆れた。

 詩音が、翼の後ろに忍び寄る影に気づく描写。

 瑠叶は翼の机に置かれた、紙パックのジュースが目に入った。

瑠叶「つーちゃん、僕のどかわいた。それちょうだ……あ」
翼「?」

 ムスッーと頬を膨らました瑠叶を不思議に思い、後ろを振り向いた翼。
 翼の飲みかけのジュースを飲んでいる綾人が立っていた。

翼「!?」

 咥えられたストローを凝視し、ぼふんっと顔を赤らめた翼。

綾人「……甘いね、これ。美味しいけど」
瑠叶「綾人君、ズルい。それ僕が貰おうと思ったのに。かわりのジュース買って来てー」
綾人「嫌だね。自分で行きなよ」

 瑠叶のパシリを無視して、席に座った綾人は翼の机に肘をつき、顔を赤らめて動かない翼を見つめる。

綾人「おーい、翼ちゃん? ……ジュース、全部飲んじゃってごめんね。また買ってあげるから」
翼「……ご」
綾人「ご?」
翼「5本は買ってもらうからね!」
綾人「ははっ。あんまり飲みすぎちゃダメだから、一本だけだよ」

 一連のやりとりを見ていた詩音は、ため息をつきつつ綾人に言う。

詩音「本当仲いいね、あんたたち」
綾人「でしょ?」
詩音「翼が可哀想なくらい」
綾人「それはどう言う意味かな」
詩音「さぁ?」

 ふっと小馬鹿にするような、笑みを浮かべ詩音。
 対抗するように、不敵な笑みを浮かべる綾人。

 翼は、不穏な空気に「え、どうしたの二人とも?」と慌てた。
 瑠叶はというと、「のどかわいたー」と机にでろーんと溶けていた。
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