その首輪はお断りします!【マンガシナリオ】
第6話 その行動の真意は

○夏目家リビング 

 少し時間は遡り、詩音が入って来た瞬間。

 翼は何も見えていないが、誰かがリビングに来たことはわかった。
 そのため体を起こそうとした綾人が、ソファーの背より顔を上げてしまうと、その「誰か」に見えてしまう。
 とっさに綾人の頭をガッと掴み、胸元へ引き寄せる。
 勢い余って、胸を押し付ける形になってしまったが。


翼(──これじゃ私、変態みたいじゃない!?)

 ぱっと綾人の頭から手を離した翼。
 だが、綾人は一向に動かない。
 ……屍のようだ。

翼「あ、綾人君……?」

 え、死んだ? 圧死? と不安になった翼が呼びかける。
 むくりと顔を上げた綾人の顔に、表情はない。

翼(え、何その顔。仮にも女子の胸に顔を埋めた人の顔ですか!?)

 若干カチーンと来た翼。
 そんな翼を気にもとめず、綾人は立ち上がり「おやすみ翼ちゃん」と短く言い、翼が「え? お、おやすみっ」と言い終わる前にリビングをあとにした。

 「……?」と首を傾げた翼だった。


〇場面は切り替わり
 綾人はと言うと、二階への階段を登っている途中で足を止めていた。
 きゅっと眉を寄せ、口元を片手で覆っている。その頬はわずかに朱がさしていた。

綾人(…………)
< 25 / 27 >

この作品をシェア

pagetop