S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
五章 誰よりもかっこよくて、誰よりもすごい
五章


 総合病院、製薬会社、医療機器メーカー、美容医療やスパリゾートまでも傘下におさめる医療財閥、円城寺家。その絶対的な影響力は、国内だけにとどまらず世界中に及ぶ。権力も財力も、他の追随を許さない。

 当然、円城寺本家の屋敷ではたくさんの人間が働いている。住み込みで勤めている者も多く、彼女――望月和香子もそのひとりとしてやってきた。
 柾樹が十歳のときのことだ。

「よろしくお願いいたしますね、柾樹お坊ちゃま」

 ふんわりと彼女はほほ笑んだ。身なりはどちらかといえば質素なほうだったが、上品で育ちのよさが感じられた。彼女は娘を連れていた。柾樹より三つ年下の女の子だ。

「和葉です」

 和香子が娘を紹介する。肩で切りそろえられたおかっぱ頭、短めの前髪の下にある大きな瞳が好奇心に輝いている。彼女はしげしげと柾樹を見つめ、言った。
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