S系外科医の愛に堕とされる激甘契約婚【財閥御曹司シリーズ円城寺家編】
 自分の卑しさが嫌になるが、柾樹からの契約結婚の申し出は和葉にはやはり魅力的だった。育郎の治療費も店の借金も、すべてが解決するのだから。

(もう少し、しっかり話をしてみたい)

 とはいえ、お金目当てに男性と付き合うのは人の道としてどうなのだろう。その迷いも断ち切れない。柾樹は和葉のそんな葛藤を見透かしたようにクスリと笑う。

「気にするなと言ったろ。今は金目当てでいい。すぐに俺が目当てになるんだから」
「どうしたらそんなに自信満々になれるんですか? うらやましいです」

 和葉があきれた顔をしても、彼にはどこ吹く風だ。

「逆に、俺が自信をなくす理由を教えてほしいくらいだな」
「ぐっ……」

 実際、この性格以外にはなんの欠点もないパーフェクトな男なので和葉には返す言葉もない。清々しいほどのナルシストぶりに和葉の口からも笑みがこぼれた。

(それに、彼のこの言動で気が楽になっているのも事実だ)

「乗れよ」

 柾樹は助手席に和葉をエスコートしてから、静かに車を走らせる。
 彼の愛車は、内装も驚くほどのラグジュアリーっぷりだ。座面もふかふかで座り心地がいい。こんな車、もう一生乗る機会はなさそうだと和葉はキョロキョロしてしまう。

「この車って……」

 和葉が車種を当ててみせると、柾樹は少し驚いた顔になる。

「車に詳しいのか? 意外だな」
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