Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
社長と皆川さんは細々と今後のことを確認すると、この後の対応と謝罪行脚に向けて早々と帰っていった。

一人残され、改めて事態の大きさと深刻さに身震いがした。

自分を慰めるように私は腕を肩に回して自分を抱きしめる。

その時、ふと昨日の真梨花の言葉が蘇ってきた。

ーー「調子にのってられるのもあと少しですよ」

(もしかして、あれはこのことを言ってたの!?ということは、真梨花はこの事態を知っていた?ううん、むしろ私を陥れた‥‥?)

そう思えば合点がいく気がした。

私の身が無事だったことからも、これはスキャンダルを捏造することだけが目的だ。

つまり私を陥れて女優生命を奪うことが真の目的なのではないかと思えるのだ。

彼女が事前に知っていた以上、なにかしら関わりがあるのは間違いなかった。

(だけど、外部と連絡を取ることを禁じられているから確認ができない!それに聞いたところでシラを切られる可能性が高いかも。証拠がないんだから‥‥)

はぁと大きくため息が漏れた。



それから2時間くらいが経過した頃から、携帯電話がひっきりなしに鳴り始めた。

過去に共演した役者仲間や監督、スタッフさんなどからだった。

おそらく文秋の記事が公開されたのだろう。

心苦しくも、社長の指示通りそれらには一切応えずに無視した。


確認のために自分でもインターネットを開いてみると、大手検索エンジンのトップニュースに上がっていた。

さらにSNSのトレンドワードにも「神奈月亜希」の名前がランクインしている。

恐る恐るコメントを見ると、罵詈雑言の嵐だった。

ーーマジ最悪。応援してたのに。
ーーなにが清純派だ。ただの淫乱じゃねぇか。
ーー幻滅した。もうテレビで見たくない。
ーー騙されてた気分。すべて演技か。
ーーもう女優としては終わりでしょ。死ね。
ーー淫乱、ビッチ、死ね、死ね、死ね、死ね。


辛辣な言葉の連続に、スマホを持つ手がガタガタと震え、胸が張り裂けそうに痛い。

こんなにも多くの人の悪意を一斉に浴びて気が狂いそうだった。


さらに、お昼になるとテレビのワイドショーが始まり、文秋の記事を紹介しながら特集として取り上げ始めた。

コメンテーターの斬るような言葉が、グサグサと突き刺さる。

テレビで特集されることで、ネットニュースやSNSはさらに加熱し、あることないこと書かれていく。

今回の件だけでなく、私の学生時代の写真が晒され、学生時代の友人という人がインタビューまでされている。

ーー彼女は昔から男癖が悪くて。取っ替え引っ替えでしたね〜。
ーーあの顔だからモテるんですよ。だから男漁りがひどくて、みんな引いてました。
ーー彼女と関係のあった人に聞いたところによると、夜も激しいらしですよ。

見たこともない人が得意気に私を語っている。

どれもこれも事実無根な話なのに、さも真実のように語られ、報道され、事実として世の中に伝わっていくことに恐怖を感じた。

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