Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
智くんが帰国してからの私の日々は、寂しい思いをする暇もないくらい目まぐるしく忙しいものだった。

ドラマの撮影はもちろんのこと、ドラマのプロモーションの一環としてアメリカ雑誌の取材、テレビ出演なども入った。

プラハとアメリカを行き来する必要もあり、体力的にもハードだった。

それに全編英語の演技は初めてだったので、セリフ覚えもいつもより時間がかかるし、英語での感情の込め方は日本語とは違うからそこで行き詰まったりもして毎日が勉強でもあった。

撮影の合間に、アマンダからアドバイスをもらったり、プロデューサーやディレクターにも意見を伺ったりと、努力を重ねる。

撮影中はたまにCEOのジェームズさんもふらりと観に来てくれていた。

この期間、たまの休日にはカタリーナと食事に行き、今まで言えなかったことをすべて包み隠さず告白した。

日本で女優をしていたこと、スキャンダルにまきこまれたこと、智くんと偽装婚約をしていたこと、そして本物の恋人となり結婚し、また女優を再会したこと。

カタリーナは智くんとの話に納得したようで、どうりで突然同居しだしたわけねと頷いた。

『でも初めて2人が一緒にいるところを見た時には、本当の恋人のように見えたから、最初は怪しんでたけど安心したんだけどなぁ』

『それは私が婚約者っぽく見えるように演技してたからだよ』

『ううん。あれは演技とかじゃなく、なんていうか相性の良さをオーラで感じたというか。ともかく、私の目から見ると、2人は結ばれるべくして結ばれた気がするけどね!』

『うん、今はとっても幸せだよ。あの時、私をプラハに呼んでくれてありがとう。逃げても負けじゃないって言われて救われたの。智くんと出会えたのもカタリーナのおかげだと思ってる』

『ふふっ。幸せなら良かったわ!環菜の女優としての活躍も楽しみにしてる。今撮影してるドラマが配信されたら教えてね!』

昔からの友人として変わらず接してくれるカタリーナには感謝の気持ちでいっぱいだ。

耐え続けることだけが道じゃない、逃げる道もある、そしてその道は日本にだけ存在するのではなく、海外にも存在するのだと視点を変えてくれたのはカタリーナなのだから。
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