Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
その頃の環菜と智行はーーー。


「環菜!月9主演の話が来たよ!骨太な医療ドラマで女医役をお願いしたいって。月9以外からも続々と主演で話来てるし、超有名監督からは映画のキーマンになる役のオファーもあったし。さらに某食品メーカーからは商品アンバサダー、某化粧品メーカーからはCM出演と捌くのが大変なくらい仕事が殺到してるよ!」

皆川さんの嬉しい悲鳴が電話口から聞こえる。

「Beautiful days in Prague」の撮影後は、その時にお世話になったプロデューサーやディレクターに声を掛けてもらい、アメリカのTVドラマや映画にゲスト出演したりしていた。

日本で智くんと暮らしながら、仕事の時だけアメリカに飛ぶという生活だったのだ。

智くんもアメリカに出張に行くことが度々あり、時には現地で落ち合って向こうで一緒に過ごしたりもした。

そんな生活が一変したのが、撮影から約1年後に公開された「Beautiful days in Prague」の予想以上の大ヒットだった。

ヒットに合わせて、桜庭環菜として活動し出した時に立ち上げたSNSは急激にフォロワーが増え、全世界の人に注目される立場になった。

日本のメディアからも熱い視線を注がれ、連日特集を組まれる事態だ。

そして先の嬉しい悲鳴の通り、日本でも演技の仕事が続々と入ってきたのだった。


「電話変わって?」

「え?うん‥‥」


休日の午前中、遅起きしつつベッドの上でゴロゴロしている最中だった私の隣には智くんがいて、智くんは奪うように携帯電話を私から受け取り、皆川さんと話し出す。

「もしもし、電話代わりました。皆川さん、そのオファーが来てる仕事、ラブシーンのないもの優先でお願いしますね。あるものを受ける場合は、イメージ戦略やキャリア戦略においての必要性とメリットを僕まで報告していただければ」

「‥‥!は、はい!」

智くんは日本に帰国して離ればなれの期間中に私の過去の出演作を観て以来、こうやって仕事の内容を気にするようになった。

第2のマネージャー化している。

しかも本来のマネージャーである皆川さん以上に戦略重視でシビアだ。

戦略を鑑みると必要だと思われる作品であればラブシーンのあるものにも出演しているが、その撮影後の夜は智くんにドロドロに愛されるというのがお決まりのパターン化している。
< 167 / 169 >

この作品をシェア

pagetop