Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
私の両親は幼い頃に事故で他界している。

物心つく前のことで私は正直覚えておらず、両親の顔もうろ覚えだった。

そんな私を育ててくれたのは、母方の祖父母だ。

小学生の頃に「なぜ親がいないの?」と同級生に言われ、両親がいないことでバカにされたくない、負けたくないと思った私は、何事もやると決めたら徹底的に頑張る負けん気の強い女の子に育った。

祖父母には心配をかけたくなくて、なんでも一人で解決してきたように思う。

こういった性格は今もそのままだ。

ただ外見はおっとりした癒し系だそうで、男性に守られて生きていそうなタイプに見えるらしい。

だから、見た目と中身が違うねとよく言われるのだろう。

そんな私を育ててくれた祖父母も昨年相次いで他界し、私は天涯孤独となった。

メディア露出が多くなり、祖父母に私がドラマや映画で活躍しているところを見せることができたことは良かったが、願わくば主演しているところを見てもらいたかった。

一人になってしまった私の心を支えてくれたのは演技だった。

演技をしている時だけは、全く別人になり、他の人の人生を歩める。

演技は仕事でもあるけど、今や私の人生になくてはならないものなのだ。


キッチンでコーヒーを淹れると、ソファーに座り、またさっきもらった台本を読み始める。

まだキャスト顔合わせや台本読みは先だけど、私はペンを片手に台本に目を通しながら、ポイントに印をつける。

役の心情になりきり、こうやって台本を読む時間が私はなにより好きだった。


時間を忘れて夢中になって読んでいると、もう夜も遅くになってしまっていた。

(いけない‥‥!明日はCM撮影もあるから早めに寝ないとお肌が荒れちゃう!)

急いで台本を片付け、シャワーを浴びて就寝の準備をし、私はベッドに横になった。

目を瞑ると、ふと昼間に会った真梨花の言葉を思い出す。

(調子にのってられるのもあと少しってどういう意味だろう?真梨花さんが何か大きな仕事でも得られたってこと?それにしては不吉な予言って感じだったけど‥‥)

考えても考えても分からず、私はこれ以上思い悩むのはやめにした。

そのうち分かると言うなら分かるのだろう。

今考えてもしょうがないことだと思えた。




たが、私はこの時もっと注意深く考えてみるべきだったのだ。

そのうち分かるという言葉のとおり、それは翌朝に露見し、私の人生を大きく変えることになるのだったーー。
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