若旦那様の憂鬱〜その後の話し〜

新しい生活

産後1週間程で花は退院して家へ帰る事が出来て、産まれて来た子は椋生(りょうせい)と名付けられた。

椋(むく)の木のようすくすくと元気に育ちますようにと言う願いを込めて2人で考えた。

未熟児で産まれた椋生は花より退院が2週間遅く、その間、花は毎日母乳を届け病院に通う事になった。

母乳がちゃんと出るか心配だった花だけど、
1週間もしない間に、張って痛いほどで毎晩痛いほどで柊生が心配するほどだった。

柊生が、冗談なのか本気なのか分からない顔で『痛いなら、俺が飲んであげようか?』と言ったので、それは丁重にお断りしたけれど…

すくすくと成長した椋生は2週間後には無事に退院して、それからは慌ただしく眠れない日々が始まった。

3時間起きの授乳に、夜泣きや夕泣きそれはそれは手のかかる赤ちゃんだったけど、柊生がなんとか仕事をセーブして平日は定時で帰り、花のサポートをかって出てくれた。

土日の司会や公演会も永井と手分けしてこなすようになった為半分ほどに減った。

そのおかげで花は1日に1時間ほどは1人の時間を確保出来たし、家事もヘルパーさんにお願いして無理なくこなすようになった。

「私、他のママに比べたらいろいろ楽しちゃっていいのかなぁ?
ほとんど1日、椋ちゃんのお世話しかしてないよ。」

花はヘルパーさんの作ってくれた夕飯を食べながら申し訳ない気持ちになる。

「それで良いんだ。頼れるものは頼って手を抜けるものは手を抜いて、ちゃんと睡眠が確保出来ない間は誰だっていっぱいいっぱいになるから、出来るだけ人の手が多い方が良いんだ。」

柊生はなんだって1人で頑張ろとしてしまう花の性格は充分分かっているから、子育て以外の負担は出来る限り取り除きたいと思っている。

「ありがとう。柊君も毎日定時で帰るの大変なんじゃない?
他の社員の方に負担が大きいなら無理しなくていいんだよ?」

「大丈夫だ、仕事の方は順調だから。
無駄な仕事を削ぎ落として、人も1人増やしたしみんな定時で帰れてるから。」

柊生にとっていつだって1番は花の事。
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