乙女と森野熊さん


「あれ?」


夏休みの金曜日、合気道の朝練を終え十時過ぎに家に戻るとキッチンに熊さんのお弁当が置いてあった。

朝、お弁当を作ったから持って行ってとメールしたはずなのに。

メールはきちんと送信されている。メールに気づかなかったのだろうか。

お弁当どうしよう、と悩んでいてひらめく。

そうだ!熊さんの仕事場に直接届けに行けば良いのだ!そうすれば堂々と警視庁に行ける!!

あの警察署での一件があったあと、私の熊さんは警視庁でどんな仕事をしているのかという興味は膨れるばかりだ。

窓際でただ黙々と仕事をしているというのだから、何となく会社で仕事をしている人しか想像できない。

いつもスーツで出て行くけれど、警視庁に着けば制服に着替えたりするのだろうか。

きっと警視庁の中には入れないだろうが、入り口とかに出てきてもらえばちょっとお仕事モードの熊さんに、もしかしたら制服とか着てる熊さんに会えるかもしれない。

私は急いでシャワーを浴びて髪を整え、いつもは着ない可愛いワンピースを引っ張り出してきて身支度を調えるとお弁当を持って颯爽と家を出た。

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