黄昏色の街で
 翌日は土曜日。 早起きする必要も無いので布団の中でゴロゴロしている。
佳代子はと言うと、こちらもこちらで同じように寝返りしながら夢を見ているようだ。
と、いきなり私の胸に飛び込んでくる。 でもそれがなんだか幸せに思えるから不思議である。
考えてみなさい。 30そこそこの娘が居たっておかしくない年なんだよ。
私もそんな年になったんだねえ。 不意にも要して布団を出る。
すっきりして寝室に戻ってくると佳代子もぼんやりと目を覚ましていた。
「おはようございます。 今って何時ですか?」 「11時だよ。」
「昼ですねえ。 よく寝たみたい。」 「そうだねえ。 あの店で酔っぱらって今までよく寝たねえ。」
「そんなに寝てたんですか? びっくり。」 「何か飲む?」
「ああ、私コーヒー牛乳飲みたいです。」 「ああ、うちに無いから買ってくるよ。」
「え? 買わなきゃ無いならお茶でもいいですよ。」 「いやいや、どうせ買い物に行こうと思ってたから買ってくるよ。」
そう言って私が靴を履いているとモソモソと佳代子も玄関へやってきた。
「私も行きます。」 「じゃあ、、、。」

 私はスーツを着ている佳代子と二人並んでスーパーを目指した。 何課変。
仕事帰りに居酒屋に寄ってそのまま連れてこられたのだから佳代子もどっか変な思いのはず、、、。
だと思ったら案外楽しそうである。 「次は普段着で来なきゃダメですねえ。」
そう言いながら笑っている。 憎めないお嬢さんだ。
 スーパーに入ってもあっけらかんとした佳代子の明るさはそのまま、、、。
レジ打ちのおばさんも怪訝そうな目で私たちを見ている。
買い物を済ませると来た道を歩いて帰るのだが、、、。
「ねえねえ、小林さん 私に変なことはしませんでしたよね?」 「変なこと?」
「よく居るじゃないですか。 酔ってるから何をしてもいいだろうって思ってる男の人。」 「居るねえ。 私の上司にも居たよ。」
「小林さんはどうなんですか?」 「私かい? そりゃあ思わないことは無いけど、やったりはしないよ。」
「なんか寂しいなあ。 好きな人に触ってもらいたいって思ってるのに、、、。」 「え?」
私はまたまたドキッとした。 そんなことを思う女性が居るのだろうか?
確かに居ないことは無いと思うけれど、、、好きな人に触られたいって本心なのかな?
 私は隣で歩いている佳代子の横顔をそれとなく見詰めた。
日差しも有るからか、ポーっと赤くなっているように感じるのである。
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