この熱に溺れてしまいたい。


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「……ふう。……できた」



目の前に積まれた、綴じられたプリントたち。解放感が体に満ちている。

意外と多かった。ちょっと恨めしく、頭に浮かんだ先生にもう一度毒づいておく。


教室から外を見ると、もう日が暮れていた。


……もうこんな時間。早く帰らないと。



がた、と音をたてて席を立つ。廊下かから覗くのは、青みがかった夜空。



「…わ…!…きれいな満月……」



ぽーっと見とれていると、不意に手の力が抜けて手に持っていたプリントの束を落としてしまった。


……うう。今日二回目だよ…。



「……もう…。ーーっい、た…」



しぶしぶ紙を拾っていると、角で指を切ってしまった。


けっこう深く切ったみたいで、血が出てる。


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