聖女さまがいっぱい!(聖女ショートショート集)
 どうしましょう。

 聖女は焦っていた。

 聖女としての力をなくしてしまったからだ。

 心当たりはあった。

 先日、儀式で王子と対面したとき。

 聖女の心臓が大きく鼓動を打った。

 次いで、早鐘のように打ち始めた。

 顔がかあっと熱くなるのを感じた。

 恋だわ、とすぐに彼女は理解した。

 整った顔立ちにきらめく金髪。青い瞳は澄み渡る青空のようで、彼女の心を恋の翼で解き放してしまったのだ。

 それからというもの、彼女は力をなくしてしまったのだ。

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