スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
第1章

◇父、亡くなる




 ここ、【御菓子司(おかしつかさ)・お(きく)】は老舗和菓子屋だ。
 私は、菊亭(きくてい)千愛(ちあ)。ここの一人娘で売り子として働いている。


「千愛さん、練り切りできましたよ〜」

「ありがとうございます。瑛一(えいいち)さん」


 この人は、ウチで働いてくれている和菓子職人の瑛一さんだ。彼は私の婚約者だ。


「うん、あんみつは三十あるからよろしくね」

「はい! ありがとうございます」

「今日からのすもも大福は十時半から出せると思う」

「ありがとうございます!」


 私は作られた上生菓子を最近新しく購入した対面ショーケースに入れてそれが終わると、【新商品:すもも大福】と書いてあるチラシにペンで十時半と数字で書いた。

 開店すればチラホラとお客様が入ってきて、上生菓子が少なくなってきた頃にすもも大福がショーケースに並べられる。



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