スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。



 壇上から降りると、お祖母様とは別れて和成さんと挨拶に向かう。

 ほとんどが由良乃製茶の取引先の方だ。でも時々、懇意にしていただいている政治家さんに挨拶はとても緊張した。


「……疲れていないかい?」

「はい。和成さん。大丈夫と言いたいのですが少しだけ疲れました」

「それはそうだろう。慣れない初めての場であんだけ注目されれば仕方ない。初めてなのにとても堂々としていて令嬢にしか見えなかったよ」

「本当? よかった」


 安心していると「千愛、少しここで待っていてもらえる?」と和成さんに言われたので私は頷いてから「大丈夫です」と答えた。
 和成さんはごめんというポーズをして中心の方へ行ってしまったので壁の方でくっついた。

 ウェイターさんから頂いたドリンクを飲みながら会場内を見ているとここで呼ばれるはずもない名前で呼ばれた。


「お菊、さん……?」


 【お菊】は、和菓子屋の名前。この場では呼ばれるはずもない名だった。
 だからだろうか、私はその声が聞こえた方を見ればそこには予約を頻繁にしてくださった……大宮様がいらっしゃった。





 
 
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