LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 彼女を守りたい。だが、自分にそれができるのか。今日できなかったのに。

 瑠璃は最初から新しい人を雇うのに反対していた。純麗のときは反対しなかったのに。

 直哉の言う通りだ。瑠璃を買いかぶっていた。

 仕事に一生懸命の瑠璃が、職場で故意に人を傷付けるようなことはしないと思っていた。前の職場で傷付けられたことのある瑠璃ならなおさら。

 実際、この店で働いてから、純麗ともめたことは一度もない。

 歓迎会のあとに藍が言っていたことをもっと重視するべきだった。あの発言は藍が酔っていたからだと思っていた。それ以上に藍がそばにいるという自分の喜びに舞い上がっていた。迂闊(うかつ)だった。

『人を幸せにするジュエリーを作る、売る』

 その言葉が今、重く瑶煌にのしかかる。

 藍のことで舞い上がって、何も見えていなかった。

 ため息をついて、作業机の上を片付けた。

 工房の鍵をしめ、カードキーで警備システムを作動させる。作動させたあとに誰かが解除なしに侵入すると警報が鳴るようになっている。

 店の鍵を閉めたときに、人の気配に気づいた。

「……瑠璃?」

 街灯に照らされ、瑠璃が立っていた。

「話がしたくて、待ってた」

 瑠璃の表情は陰になっていて見えなかった。







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