LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 青い石。

 トルコ石じゃない。

 ブルートパーズでもない。

 アクアマリンでないと。

 店員を見上げたとき、うしろの壁にペンダントが飾られているのが見えた。

 たくさんかけられている中の一つに目を奪われた。

 ドロップ型の石だった。

 空の雫だ、と思った。

 薄く雲がかかった青空のような。

 母がいつだったか言っていた言葉を思い出す。

 全体に雲がうっすらとかかっている空を見て、

「今日は花曇(はなぐも)りね」

 と言ったのだ。

 (くも)りとは言っても花という言葉がついている。青空も見えている。藍にふさわしいかもしれない。

「あれはいくらですか」

 指で差して店員に聞く。

 店員は壁にあるペンダントを手に取った。

「これのこと?」

 瑶煌が頷くと、店員は値段を伝えた。

 よかった。払える。

「これを下さい」

「これでいいのね?」

 店員が確認する。

「これがいいです」

「プレゼント?」

「そうです」

 店員はにっこり笑った。

 今回は特別サービス、とラッピングを無料でやってくれた。

「ありがとうございます!」

 彼は大きな声でお礼を言った。

 店員はまたにっこり笑った。彼を応援するかのように。



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