LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 そういえば、アクアマリン、どこに……。

 あのとき着ていたスーツのポケットに手をいれるが、指先は布の感触を伝えるばかりだ。

 バッグのなかを探っても見当たらない。中身を全部ガバッと出して小さなポケットまで調べるが、どこにもない。

 どうして……。

 どこに行ってしまったのだろう。

 強盗の騒ぎのときに落としてしまったのだろうか。

 それならもう、今さら探しても見つからないのではないだろうか。

 割れたショーケースの破片と一緒に捨てられただろう。

「もう、忘れろってことなのかな」

 君はもう勇気なんて必要ないんだよ。そのまま臆病に無難に生きて行けば。

 頭の中で少年が言う。

 そんなこと言われたことがない。

 言うはずがない。

 それなのに。

 引越しをするんだ、と言って去っていく少年の後ろ姿。

 彼は一度も振り返らなかった。

 藍はずっと見つめていたのに。

 彼は振り返らなかった。





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