LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

64 俺のせい

 事務所との出入口付近に立ったまま、直哉はたずねる。

「藍ちゃんがどうしてここに。鍵持ってないよね?」

「日長さんを待ってました」

 藍はそう答える。

 彼からは緊張を感じた。何かあればすぐ逃げようとする小動物のような緊張。

 直哉は何も答えなかった。

 ただそこにいて藍を見ている。

「みんな心配しています。店長と桜内さんはいま外へ探しにいってます」

 そうだ、連絡しないと。

 スマホを取り出したとき、直哉が駆け寄ってその手を片手で掴んだ。もう片方には包丁。

「連絡しないで」

「でも」

「すぐに片をつけるから」

 直哉は暗い目をしていた。

 その意味を察し、藍はうろたえる。

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