LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
 飲み過ぎた藍を送るとなったときは胸が高鳴った。

 車中で眠ってしまったときは本当に焦った。仕方なく家に連れて行ったが、彼女と一緒にいたいという下心がなかったかと言えば(うそ)になる。

 車から降ろすときに起きてしまうかと思ったが、ぐっすり眠ってしまっていた。

 そのまま抱きかかえて部屋に行く。いわゆるお姫様だっこをして。

 人間って重いな。

 率直にそう思った。だが、愛しい人を落とすわけにはいかない。

 そのぬくもり、柔らかさ。酔って脱力しているせいか、ぐんにゃりしている藍の体は、なおさら柔らかく感じられた。

 その状態で必死にマンションのドアをあけ、中に入る。

 藍がむにゃむにゃと起きるような様子を見せたので降ろして立たせる。と、ぐらっと瑶煌のほうに倒れて来て、咄嗟(とっさ)に抱きしめた。

 スーツの硬い布地越しでもわかる、柔らかな肢体。

 思わずぎゅうっと抱きしめる。

 直後、藍はつぶやいた。

「……吐く」

 慌てて彼女をトイレにつれていき、介抱した。

 雰囲気もなにもあったものじゃない。

 瑶煌はフフッと笑った。

「あ、思い出し笑いとか、やらしー!」

「なに言うんだよ」

 努めて不機嫌そうに、瑶煌は言った。(あわ)てて顔をひきしめたが、自分でも頬が緩んでいたのがわかる。絞まりのない顔をしていたに違いない。

 それを見た瑠璃がまた不機嫌になったのだが、瑶煌はまったく気付かなかった。



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