LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜
『ジュエリー制作には主に鍛造(たんぞう)製法とロストワックス鋳造(ちゅうぞう)があります。今回は鍛造製法の彫金の技術で指輪を作ります。材料は棒材を使います』

 まず、銀色の数ミリ幅の棒を取り出す。シルバー925だ。925はシルバーの純度を示すもので、92.5%の銀が使われていることを示す。100%だと柔らかくて使用に耐えられないため、混ぜ物がしてある。

 その棒をゲージ棒とよばれる金属の棒に巻き付けてハンマーでたたいて曲げていく。

 一周したところで金属を切る。

 ロウ付けという作業でつなぎ目を繋ぐ。ロウをバーナーで溶かしながらつなぎ目に流し込むのだ。
 はみ出たロウを削り、またゲージ棒にはめて叩いていく。

 歪んでいたものがみるみるうちに真円に近付いて行く。

 それを磨いていくとシンプルな指輪ができた。

 そこからタガネと呼ばれる棒とハンマーを使って平らな面に模様をつけていく。

「すごい」

 みるみるうちに指輪が出来上がり、藍は感嘆の声を上げた。

 まるで魔法のようだと思った。

 最後にはこんなものもできますよ、といろんなジュエリーの画像が付け加えられていた。

 ほかの動画も見てみた。直哉の言っていたバングルを作る動画もあった。

 見終わって満足してスマホをテーブルに置いた瞬間。

「あ」

 ふと気が付いた。

 本がなくてもネットで検索したら宝石の情報が見られたじゃん。

 自分の頭の回らなさに、藍はへこんだ。

 ため息をついて、アクアマリンを取り出す。

「エメラルドと含有物が違うだけなんだって。知ってた?」

 と思い出の中の少年に語りかける。

 もちろんだよ!

 きっと彼は顔いっぱいの笑顔で答えるに違いなかった。




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