LE CIEL BRILLANT 〜無職29歳、未経験の仕事に挑戦したらジュエリーデザイナーにこっそり溺愛されてました〜

27 向いてない

 * * *


 何事もなかったかのように時間はすぎていく。

 瑠璃は相変わらず冷たいし、瑶煌は工房に籠っているし、直哉は軽い。

 だから土曜日になって純麗(すみれ)が出勤してくると、藍はすごくほっとした気持ちになった。

「歓迎会やったんだって? 私も呼んでくれたらよかったのに」

「ごめん、急に思いついてさ。平日に急に呼んでもこれないよね」

 文句を言う純麗に直哉は平謝りだった。

 土曜日も、日曜日もまた忙しかった。

 本を読んでネットも見て勉強をしたつもりだったから今度はきちんと接客できるかと思ったが、現実は甘くなかった。いくら知識を増やしても接客のスキルがない。

「少々お待ちください」を連発し、客を苛立(いらだ)たせることもあった。

 その上、クレーマーまで現れた。

「ここの商品を質屋に持っていったら二束三文だったわ! 偽物売ってるんじゃないの?」

 という人もいれば、

「返品したい」

 と別の店の商品を持ってくる男性もいた。

「クレジットが通らないのはなんでよ!」

 と怒る主婦もいた。

「ここ買い取りやってないの?」

 と不満をぶつける夫婦もいた。

 そのたびにおろおろするのだが、直哉と純麗が助けてくれた。瑠璃は助けてくれるどころかむしろクレーマーを藍に投げてくる始末だった。

< 99 / 262 >

この作品をシェア

pagetop