束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】
「あー、お店ん中あったかー。生き返るー」
「彩子はホント寒がりだよね」
「うん。寒いのは昔から苦手。冬はずっとお家にいたい」

 恵美と約束していない日は社食か持参した弁当を会社で食べるのだが、恵美と約束した日はいつも外で食べるのがお決まりになっている。寒いのは嫌いだが、大好きな友人とおいしいランチを味わうこの時間にはそれを上回る価値があるのだ。

 彩子がお茶を飲んでほっと息をついていれば、恵美が早く聞いてくれと言わんばかりの表情で迫ってきた。

「彩子、ちょっと聞いてよ」
「何?」
「今日さ、小谷さんが左手の薬指に指輪つけてきたわけ。宝石がキラッキラ輝いたやつ」
「え? 左手薬指って……」
「そう、婚約指輪。どうも週末プロポーズされたらしい。いや会社につけてくるからびっくりして。快く思わない人もいるかもしれないから気をつけろって言っといたんだけどね」
「……まあ確かに妬む人もいるかもしれないもんね。かわいいから余計に」

 彩子は下を向くと自分の手が震えていることに気づいた。

 それを抑えようとぎゅっと強く手を握りしめる。

 彩子は嫌な予感がしてしかたなかった。
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