束の間を超えて ~片想いする同僚兼友人に、片想いをした~ 【番外編追加済】

5. 恋人の距離へ

 洋輔がホテル近くの駐車場まで乗せてくれるというので、彩子はそれに甘えることにした。

 今日は袖付きで膝下丈の紺のワンピースに、少しヒールのあるパンプスという出で立ちである。このパンプスで長く歩けばやはり足は痛むだろうから、車で送ってもらえるのはありがたかった。


 待ち合わせ場所で待っていれば、ほどなくして見知った車が近くに止まり、中から人が出てくる。もちろん出てきたのは洋輔だ。グレーのパンツに濃紺のジャケットを羽織っている。普段からおしゃれではあるが、いつもよりも少しだけカチッとしたその姿に思わず見惚れてしまった。


「彩子、お待たせ」
「ううん。お迎えありがとう」
「どういたしまして。彩子。すごくきれいだよ。とっても似合ってる」
「ありがとう。洋輔も素敵だよ」
「ははっ、ありがとう。じゃあ、行こうか。乗って」

 洋輔は助手席のドアを開け、彩子が持っていた荷物を持ってくれる。その扱いにまるでお姫様になったような気分だ。

 顔を合わせれば緊張してしまうかと思ったが、普段通りの洋輔に彩子も自然体でいられた。
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