孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 口をへの字にする彼を見て、噴き出してしまう。

「素直じゃないですね」

 笑っている私につられるようにして、彼の表情も少し和らいだように感じるのは、気のせいだろうか。

 私の腰を支えてベッドに下ろすと、壱弥さんは足元に丸まった布団を引き寄せた。

 隣に横になると間接照明の電源を落とした。急に舞い降りた闇に視界を奪われる。

「もう寝ろ」

 暗闇に響く声に、少しだけ胸が騒ぐ。

 今日はくっつかないで寝るのかな。

 なんとなく寂しい気持ちでいると、ふいに伸びてきた大きな手が私の手を優しく掴んだ。指が絡んで手のひらから温もりが伝わってくる。

「今日はこれでいい」

 ささやくような声にどきりとする。しばらくして寝息が聞こえてきても、私の意識は手のひらに集中したままだった。

 絡まった指。ごつごつした手のひらの感触。

 不思議だ。腰に抱きつかれるよりもずっと距離が近づいたような気持ちになるなんて。

 これまで一緒のベッドに入っていても別々で寝ていたような気がしたのに、手のひらから伝わるぬくもりに気持ちが緩んでいく。

 暗闇に少しずつ慣れてきた視界に、目を閉じた壱弥さんが映る。

「おやすみなさい」

 もっと近づきたい衝動をこらえながら、私もそっと瞼を下した。 


















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