孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない

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 九月も半ばだというのに、車内はきんきんに冷房が効いている。都心をぐるりと一周する山手線は、午後四時という中途半端な時間でも座席が埋まり、満員とはいかないまでも人がたくさん立っていた。

 シャツの袖をまくって汗をぬぐう営業マンや、涼し気なポロシャツ姿でビジネスバッグを持っている男性。格好はさまざまだけど、乗客の多くはビジネスマンだ。

 一番端の座席に座った私も一応はシャツにサマージャケットを合わせたスーツスタイルだけれど、ビジネスマンからは程遠く、現在、絶賛求職中。バッグからはみ出したカラーファイルに目を落とすと、昨日撮ったばかりの履歴書の証明写真と目が合った。

 遊佐ひかり。二十六歳。

 亡くなった父親譲りの目はくっきり二重なものの、肌も目も髪色も色素が薄く全体的にぼんやりした顔に見える。身長は平均的な百六十センチで体型はやや細身。ヘアサロンに行く余裕がなくて背中まで伸びてしまったストレートヘアは、たいてい後ろでひとつに結んでいる。趣味は掃除、特技は大量の料理を短時間で効率的に作れること。なんて履歴書にはとても書けないようなアピールポイントしかない。

 下に歳の離れた弟妹が四人いるから面倒見はいい。でも就職活動においてはなんの強みにもならない。

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