フォーチュンクッキー
 オレの苦しい言い訳はどうせおちょくられると思っていた。

でも、返ってきたのは予想すらしてなかった言葉。



「そんなんじゃ、またもってかれるぞ」



 いつになく鋭い視線だ。


 あの明るくて能天気に見える怜が、急に真剣な瞳に変わったのにオレは戸惑いを隠せなかった。



「…ま、またって、なんだよ……」


 明らかにオレは覇気を失っていた。

そして何かを知っているかのように含みをもたせる怜に、なんとなくイラついた。


 なるべく表にださないようにと、ぐっと言葉を飲み込む。



「ま、がんばれよ!太一セ~ンセ♪」

 髪をぐしゃっと撫でむしられた。

 オレだって身長はなかなかあるほうだけど、怜はさらにでかい。


「……ってぇな…」

 いっても聞かない文句をつぶやいた。



 オレの髪を触ったその腕には、よく似合うごつい腕時計がやけに目につく。


 思い出す、サトの顔。



「サト、料理コンテストで表彰されたんだろう?」


 目に付いたからか、ただ単に変えたかっただけなのか、怜に話をふる。

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