真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「息吹は?読んだ?」
息吹ちゃんは寧々様に親指を立てて、
「な、何とか!」
と、答えている。
寧々様は、
「短編小説と言ってもさー、これ、読みづらかったね」
と、自分の課題作品である原稿用紙をヒラヒラさせている。
「この小説って、いわゆるスピンオフみたいな小説なんだって。途中で登場する成功した女性が、本編の主人公」
と、息吹ちゃん。
「本編が別にあるってこと!?」
寧々様の声がひっくり返る。
「うん。この短編の主人公は、本編の主人公に捨てられた人。いわゆる元カレってやつ?」
「そうだったんだ!!……なんかバッドエンドみたいな終わり方だし、読後感も良くなかったよね?」
と、言った寧々様は、自分の書いた感想文に目を落とし、
「主人公が何人もいるみたいで、私は好きじゃなかったな」
なんて、呟いた。
「えっ?」
私は頭の中で、何かが光った。
「『えっ?』って、彩葉も読んだんでしょう?」
「うん」