【短】みやまの花嫁
もぐもぐ、ごくんと飲み込んでから答える。
永悟は「あぁ」と納得したような声を出して、今様色の着物をじっと見た。
「わたしが住んでいるのは……周りに、木がたくさんあるところ。“山”の中だって聞いた」
「え、山の中? じゃあ田舎じゃん! なんだ、こことそう変わんないな」
「そう、かな……ここの方が、にぎやかだよ」
また瓶に口をつける。
今度はさっきよりも慣れて、しゅわしゅわが美味しく感じられた。
「まぁ、今日はお祭りだから特ににぎやかだけど、ここより静かって大分田舎だな。あ~あ、都会の話聞けるかと思ったのに……」
「……」
田舎。都会。
よく分からない。
永悟は、都会の話が聞けたら嬉しかったのかな……。