【短】みやまの花嫁


もぐもぐ、ごくんと飲み込んでから答える。

永悟は「あぁ」と納得したような声を出して、今様色の着物をじっと見た。




「わたしが住んでいるのは……周りに、木がたくさんあるところ。“山”の中だって聞いた」


「え、山の中? じゃあ田舎じゃん! なんだ、こことそう変わんないな」


「そう、かな……ここの方が、にぎやかだよ」




また瓶に口をつける。

今度はさっきよりも慣れて、しゅわしゅわが美味しく感じられた。




「まぁ、今日はお祭りだから特ににぎやかだけど、ここより静かって大分田舎だな。あ~あ、都会の話聞けるかと思ったのに……」


「……」




田舎。都会。

よく分からない。


永悟は、都会の話が聞けたら嬉しかったのかな……。



< 22 / 72 >

この作品をシェア

pagetop