【完結】婚約破棄が破滅への始まりだった~私の本当の幸せって何ですか?~
 彼はテーブルにあったノンアルコールのシャンパンを二つ手に取ると、私にそっと渡してくる。
 ありがとう、と言って私は受け取るとそれを一口飲んで彼の話を聞く。

「先日の舞も素敵でした。こう、クラリス様の舞は心が揺さぶられます」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいですわ」
「僕が見たのはちょうど5年前の祭での舞だったのですが、何年前から舞をされているのですか?」
「オレア祭で披露するようになったのは、7年前からですけども、舞自体は10年前からしております」
「そんなに前から……」

 彼は大きなリアクションを取って私の話を聞く。
 話をするのがうまい人だな、と思っていた矢先に、私は自分の身体に違和感を覚えた。

「──っ!」

 私はその違和感の正体に気づき、シャンパンをテーブルに置くと何事もないように振舞う。

「それでは、私は用事がございますので、失礼しますわ」
「え? あ、クラリス様……!」

 私を呼ぶ声がするが、急ぎ足で私は庭の方に出て草むらに隠れてしゃがみ込む。

「う……」

 何か薬を盛られた──
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