ワインとチーズとバレエと教授


理緒は整形外科の診察が終わり
やはり、精神科に戻るよう言われて、
巨大な大学病院をとぼとぼ歩いていた。

また、誠一郎に冷たく突き放された様に
怒られそうだと感じた。
それでも、誠一郎は自分を心配してくれていることは理解していた。

それにしても大学病院は広すぎる。

「認知症の人なら
きっと迷うわ…」理緒は一人つぶやいた。

理緒は三階の精神科外来に戻るとき
廊下で大きな有田焼の器が
飾られているのを見た。それには

「A病院贈呈」

と書かれていた。
大学病院に、よくある光景だ。
「キレイな有田焼…」
理緒は、亮二と行った、長崎を思い出した。

そこで有田焼や卓袱料理(しっぽくりょうり)を
覚えたー

あの頃が一番、幸せだったー
理緒は、亮二との生活を
思い出していたー

でも、もう亮二とは、二度と、もとの関係には 
戻れないことも知っていた。
理緒は長崎での出来事を思い出していたー


< 61 / 302 >

この作品をシェア

pagetop