ワインとチーズとバレエと教授

【交差する三人】冷徹な教授は全てを見透かす

誠一郎は、理緒が整形外科から戻り、
精神科の受付を済ませたのを確認し、
待合室に出向いた。

「津川さん」

と、理緒を呼んだ。

理緒の表情までは分からないが
この時も誠一郎は、一切、振り向かず、
さっさと診察室に入って
椅子に座って理緒を待った。

「失礼致します」

礼儀正しく、理緒が診察室に入ってきた。
両腕は、シップと包帯でグルグル巻にされていた。

「お疲れ様でした。
整形外科では
何と言われましたか?」

理緒は無言だった。

「整形の先生は
何とおっしゃっていましたか?」

「私は大丈夫です」

「あなたの感想は聞いていません。
整形の先生は、何とおっしゃっていましか?」

「ピアノのやり過ぎで、
けんしょうえん炎になっていると
おっしゃってました」

「そうですか、
それで、整形の先生には
どうするように言われましたか?」

「私、大丈夫です、頑張れます」

「あなたの感想は聞いていません」

誠一郎は今回も冷たく言った。

「整形の先生は
何とおっしゃいましたか?」

「少しピアノを、お休みするようにと…」

誠一郎は少し、無言の時間を作ってみた。

しかし、理緒からの反応はなかった。

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