悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~

ジーク視点 変わらない君に、変わらない想いを

「……アイナに会いに行こう」

 まあまあ天気のいい日だった。
 僕は、思い付きだけでラティウス邸にやってきた。
 今日のアイナは、ワンピースの上にボレロを羽織っていて、いつもより動きやすそうだ。
 貴族のお嬢様というよりは……一般家庭の女の子がおしゃれをしている。そんな印象を受ける。
 こういう姿も可愛いなあ……なんて思っていると、アイナは申し訳なさそうにこう話した。

「ごめんなさい、ジーク。私、今から出かける予定があって……」

 ……なるほど、それでいつもと違う格好だったんだね。
 寂しいけど、突然やってきたのは僕の方だから仕方がない。
 彼女にだって都合があるんだ。
 ちょっと……いや、かなり気になったから、どこに行くのか聞いてみる。
 すると彼女はガラス工房へ向かうのだと教えてくれた。
 ……ガラス工房って、僕も一緒に行けたりするのかな。
 一緒に連れて行って欲しいと、アイナにお願いしてみた。
 まさかそんなことを言われるとは思わなかったのか、アイナは戸惑う様子を見せている。

 急なのはわかってる。
 でも、僕も一緒に行きたい。
 好きな子が見ている世界を僕も知りたい。
 未来の夫として、婚約者がお世話になっている人に挨拶だってしておきたい。
 それに、なにより……

「……アイナ。もう少し、君と一緒にいたいんだ」
< 32 / 42 >

この作品をシェア

pagetop